大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和58年(行ウ)6号 判決 1984年6月26日

原告

X

被告

Y

右訴訟代理人

坂下誠

吉川正也

末神裕昭

主文

一  原告の講求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一請求原因1及び4の事実は、当事者間に争いがない。

二1  請求原因2(一)ないし(四)の事実は、当事者間に争いがない。

右の争いのない事実に<証拠>及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(1)  浜益村は、昭和五二年度の廃棄物収集運搬請負契約締結のための指名競争入札を行うにあたり、まず同村の指名業者選定委員会において四業者を運び、これを受けて被告が、村長として右四業者を指名業者として決定したところ、右決定には訴外会社が含まれていなかつたことから、訴外会社が村長たる被告個人を相手方として損害賠償請求を提起したのが第一事件の概要であること、

(2)  被告が、第二事件<編注・札幌地裁昭五三(行ウ)第七号・同控訴事件>における応訴活動において主張した要点は、(一)第一事件<編注・札幌地裁昭五二(ワ)第一三四九号>において違法行為であると主張された被告の行為は、村長としての立場において行つた行為であって、個人責任が生ずる余地はなく、もし被告の右行為が違法とされるときは、国家賠償法に基づき村に損害賠償責任が生ずることになるわけで、現に訴外会社は村を被告として損害賠償請求の訴を提起しており、村としては、指名入札の実施という行政活動の適法性をすべて法律関係において明らかにする必要があり、この点で被告個人を相手方とする第一事件についても村独自の利害と関心をもつていたのであるから、第一事件における被告の応訴費用を村が負担するということは、実質的にみて合理的なものであること、(二)手続の面でも坂下弁護士に弁護士費用を支払うことについては、村議会の議決を経ており、また村は坂下弁護士との間で被告個人とは別に訴訟委任契約を締結しているから、右支出は法律上の原因に基づく適法なものであるとするものであつたこと、

(3)  第二事件についての第一審判決(札幌地方裁判所昭和五四年七月一七日判決)の大要は、仮に浜益村と坂下弁護土の間に訴訟委任契約が締結され、右契約に基づき委任着手金三〇万円が支払われたものであり、かつ浜益村にとつて、第一事件において被告が勝訴することに独自の利益があるとしても、結局のところ被告個人が支払うべき委任着手金を村が支払つたものと評価すべきであり、そしてこの応訴費用を村が支出することは、実質的には地方自治法第二〇四条の二の規定にいう「給付」をしたことになると解されるところ、右委任着手金は、法律又はこれに基づく条例を根拠として支出されたものとは認められないから、右支出は、違法なものであるとして、被告の主張を斥け、また、その控訴審判決(札幌高等裁判所昭和五五年九月三〇日判決)は、第一審判決が説示した理由に加えて、浜益村が第一事件の訴訟の結果につき独自の利害と関心を有していたことは認められないと説示して、被告の控訴を棄却したものであること、

2  ところで、第二事件が審理されていた当時、地方公共団体の長が長としてなした行政上の行為の違法を理由に、長個人を被告として損害賠償請求訴訟等が提起された場合に、その応訴に要する弁護士費用を地方公共団体の予算から支出することの可否については、消極的な考え方をとる裁判例があつたとはいえ、未だ確立された判例とはなつておらず、いわれのない住民訴訟によつて長個人が財政的に圧迫されることの不都合を理由とする積極的な考え方も根強かつたことは、当裁判所に顕著なところであり、かつ多様な支出態様や具体的な事案内容をはなれて、一律にその当否を断ずることについては問題があるところであり、さらに第二事件の審理を通じての被告の応訴活動が前記認定のごとき主張を中心とするものであることに鑑みると、第二事件の事案に関して、裁判所の客観的な判断をあおぐべく被告が応訴活動をしたことは無理からぬことというべきであり、これをもつて応訴権の濫用にあたると解することはできない。

また、被告の第二事件における応訴活動が応訴権の濫用にわたると解すべき根拠となりうるその他の事情を認めるに足りる証拠はない。

したがつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

三以上のとおりであるから、原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(舟橋定之 市川正巳 齊木敏文)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例